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序章 始まりは、いつも些細なこと、なのかもしれない。 今回のお話は、ちょっとした失言がきっかけだった。 期待を裏切った罰、と冗談とも本気ともつかない言葉。 「寿司にしまショウ!」 そしてそ の言葉通り、寿司にされてしまったマーマンが一人。 その名もマレマロマ。 彼は数日前、 初めて海の強敵を打ち破ったばかりだと言うのに。 身は切り身とされ、酢飯に乗せられ握られ、彼はこんな姿に… ('e')††††††<< 不思議なことにその身は時間がたつと復活する。 ('e')[][][][][][]<< しかし大流行となり、また食べられ ていく… ('e')+++[][][]<< 食される マーマン、マレマロマ。 これは、その切り身のひとつがたどる旅の経過の物語である。 第一章 エルフからの贈り物(ペルセフォネ嬢) 学院のアイドル、天才5歳児ペルセフォネ嬢から、 マレマロマ氏のもとに、贈り物が届く。 一部骨がむき出しの マレマロマ氏は、それを受け取り驚愕する。 〈料理済み*マレマロマ焼き〉食品(4)/10/5/2/塩/海サ カナの肉系。 とても美味しそうなマレマロマさん。 珍しい食べ物が好きな方に。 (’e’)■■■■■<< レシピ:{深海サカナの肉+小さな火} きちんと火のマナが 調合され、こんがりと焼かれた己の切り身。 そして、体力UPの効果も秘めたこの料理。 些細な贈り物にも妥協 しない、小さなエルフの心意気が感じられ、 マルマレロ氏は身の復活しない骨を通り過ぎる隙間風に 切なさを感 じつつも、いたく感動したのであった。 第二章 旅立ち(マレマロマ氏) さてはて、この贈り物をどうするべきか。 マレマロマ氏は考える。 己の身を離れてし まったこの切り身。 このまま食せば、共食いである。 ……なにか、なにかできないかと。 どれくらい時間がたったのだろう… おもむろに調理鍋を用意して、マレマロマ焼き…己の切り身…を その中に入れれば、調合を開始する… 〈再調理2*マーマンパスタ〉食品(4)/10/5/2/塩/海サカナの 肉系。 焼いたマレマロマを細くパスタ状に切りゆでたもの。 特殊効果はない。。 よし、 旅立つのだ、マレマロマの代わりに… そして、友人に己の切り身で作った料理を渡したのであった… 第三章 友の意を汲む(リリ氏) 寄り合い所でぼんやりと皆の雑談を聞いていたリリ氏。 料理好き、いや、一部でパティシエ並みのお菓子を作ると名高い。 そんな彼に、骨を見せつつ顛末を説明するマレマロマ。 己の切り身で作った「マーマンパスタ」を手渡し、 再調 理してほしい、と依頼する。 一瞬ためらうリリ氏。 友人の身を調理するなど、前代未聞で ある。 しかし、一人の料理人としての興味が勝ったのか。 工房に持ち帰り、調合を開始 する。 〈再調理3*マーマンつみれ〉食品(4)/10/5/2/塩/海サカナの肉系。 マレマロマパスタをさらにつぶして練り、丸めたもの。 特殊効果はない。。 揚げても、煮付けてもおいしい、つ みれ。 応用範囲の広い加工食品への調合は、リリ氏の持ち味が生きた一品となった。 第四章 天使の料理(ルーシ嬢) リリ氏の調理した料理のうわさは、瞬く間に寄り合い所で のんびりとすごす錬金術師の話題となる。 次の調合を引き受けたのは、ルーシ嬢。 天使のごとき微笑で、「マーマンつみれ」を受け取れば、 じっと何に調 理するか考える。 その真剣な表情は、神が生命を生み出す時のような 神聖で、神々しいものだったとか。 工房へ飛びかえり、〈妖精の木皿〉に「マーマンつみれ」を乗せれば 調合を開始する。 〈再調理4*マーマンラーメン〉食品(4)/10/5/2/塩/海サカナの肉系。 海サカナの肉系。マーマンつみれを細かく切り刻 んだ品物。 時々ぴくぴくと動く… そして、成功した料理は、生きのいい魚の持ち味を復 活させる一品となった。 天使ならではの料理である。 第五章 美しき もの(レオルディス氏) ルーシ嬢が次に指名した人物は、カフェ&バー Kanonのウェイター レオルディス氏だった。 彼のもつ〈山猫のエプロン〉は見た目も性能もぴか一の調理調合具である。 さぞかし、料理の腕もすばらしいことだろう。 そんな彼は、焼き魚からの経緯をききつつ、じっと考える。 湯気の上がるその料理に、少しだけ眉を動かせばそれを盆にのせ、 寄り合い所を去った。 己の工房に帰り、なにやら白い粉末を取り出し、 「マーマンラーメン」に加えれば、調理を開始する。 〈再調理5*マーマン細工〉食品(4)/14/7/2/塩/海サカナの肉系。 マレマロマを模った飴細工。ラーメンの味がする? それが如何しましたか?(にっこり すでに、原型がわからなくなるほど加工された切り身。 食べやすさ、美味しさではなく、上白糖を加え、 その見た目をマレマロマ氏のミニチュア化することにより、 美 しい料理と成した一品。 さらりと加工値を上げるあたりが……彼らしい。 第 六章 技巧の心(ルーシェ) レオルディス氏が持ち帰ったその飴細工。 輝くうろこまでが 再現されており、なんとも美しい。 じっとそれを見ていると、僕もこの旅に参加したくなった。 しかし、問題点は僕の鍋だと、この素敵な素材をぶち壊しかねない、 ということだった。 正直にレオルディス氏に相談すれば、エプロンを貸してくれるとのこと。 それは、とてもありがたい申し出だった。 そこで、調合したものがこれ。 〈再調理6*マーマン甘露煮〉食品(4)/14/7/2/塩/海サカナの肉系。 少し醤油を加え煮込めば細工の砂糖が溶け、甘露煮に。 さまざまな出汁のおかげでコクがあるとか。 レオルディス氏の作った細工を損なわず、かつ、 食べるにも美味しいものとするために、甘露煮とした。 じつ は、これ二度調合している。 一度目に、「再調理6」を入れ忘れたのである。 ………いつまでたってもドジは直 らないものである。 第七章 美食の追及に妥協な し(コレット嬢) 僕が甘露煮を寄り合い所に持ち帰ると、 その香りをかぎつけたのか、小 柄な少女がやってきた。 きらきらと目を輝かせ、甘露煮を見つめる彼女はコレット嬢。 つ い先日ちょっと変わった調理道具の調合に成功した、 と言っていたことを思い出し、僕は甘露煮を彼女に託す。 ネコ耳をぴこっと動かして嬉しそうに甘露煮を持ち帰る。 彼女は、方々に食材の調達を手配し、海の食材を集め… 数日後こんな料理を作った。 〈再調理7*親子のマレマロマンマ〉食品(6)/31/10/2/塩/海サカナの 肉系。 海鮮系の素材を使いまくって仕立てたマレマロマ印の親子丼。 薫り高きは海の潮。 深海サカナの卵、海底サカナの肉を発酵させて作られたワインを惜しげもなく使い、〈ぷにぷに鍋【ふにふく】〉(スライム状の生物) が、懸命に作り出した一品。 素材値が17も上がり、素材ランクが2ランクアップし6となった。 マレマロマさんとそのお仲間をいっぺんに味わえる豪華さ。 そして、美味しいものをつくりたいっ、という彼女の心が 素直に現れた料理と言えるだろう。 第八章 双黄 月の実力(ウェルナ教授) コレット嬢のこだわりで、加工値が跳ね上がった料理。 これをさらに加工したがるツワモノは広い学院を探しても、そうそういないだろう。 はて、どうしたものかと悩 むコレット嬢。 ふと、そのとき、若い女性の黄色い声が聞こえる。 そちらに目をやれば、そこにはウェルナ教授 の姿…… そして、数日後… なぜか僕の元に、こんなものが届いた。 〈再調理8*イチヤ干し〉食品(6)/31/10/2/塩/【双黄月】作。海サカナの肉系。 エンカ諸島の漁港イチヤには、魚介類 の干物造りに独特の手法があるらしい。 ウェルナが知っている理由は謎。 こっそり袋を 開けて覗けば、特有の磯の香り………? というよりは、少し腐敗したような匂いもする。 独特手法でつくった干 物、なのだろうか。 危険なので、とりあえず、きっちり蓋をしておいた。 「親子のマレマ ロマンマ」が一夜にしてただの魚の干物へ。 元素材のマーマンの影はどこにも見当たらない。 いったい、どんな 調合をしたのかと。 さすが上級錬金術師といったところか。 それにしても、なぜ僕のとこ におくってくるんですか、教授… こんなレポートを書いているから、首謀者と思われているのだろうか… and so on… |