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しゃべるナベ

 レニィちゃんの〈しゃべる!DSお料理ナベ〉のボタンを押してみる。

「なにをつくるのだ〜」

 え?今どこからともなく声が聞こえたような…?
 きょろきょろと工房の中を見渡す。
 しかし、リディさんがつれてきたハトが窓辺で羽の手入れをしているぐらいで、僕の工房には動くものすらない。

「きいてるのか〜?なにをつくるのだ〜?」

 そうなると、レニィちゃんのナベ、か。
 冗談かとおもったけど、ほんとにしゃべるんだ…

「なんどもいわせるな〜!なにつくるのだぁ?」

 少し怒ってるよ。まずい、まずい。
 僕はあわてて、ウサギの肉でロールキャベツ、と答えた。

「それはうまそうなのだ〜まかせるのだ〜!」

 びっくりしたけど…。心強いよ、しゃべるナベ。

「まず、うさにくとネギをいれろ〜。こなごな、もとい、ぐちゃぐちゃにしてやる。」

 こなごなもぐちゃぐちゃも困るんだけどな…
 ミンチとみじん切りにしてくれるって事だろう、たぶん。
 そんなことを考えながら指示に従って、ウサギの肉とネギをナベに入れる。
 入れると同時に魔力を感じる光が一瞬ナベを包み…

「あじつけしろ。しおとかこしょうとか〜」

 そっと覗き込むと、ちゃんとロールキャベツの中身っぽくなっている。
そこに素材値の影響を受けない程度の調味料を振り掛けると、またナベは光り、次に覗き込んだときには、4つの俵型になっていた。

「いったんとりだせ。で、きゃべついれろ〜」

 お皿を用意して、2つの俵型のネギ入りの肉の塊を取り出し、キャベツをまるのまま入れる。
 すると、ばんっ!とすごい音がして…
 キャベツの芯が僕に飛んできた。

 痛いよ?!ねぇ、何したの?!

「きにするな。たまにあることだ。さっきのをきゃべつのうえにおけ〜」

 気にするなって…。調合中の事故は良くあることだけどさ。
 ひとつため息をついて、言われたとおりに肉の塊を置く。

「くるんでやる。そのあいだに、みずとこんそめをよういしとけ」

 はいはい。用意しますよ。
 なんというか、しゃべるナベに順応しだしてるよ、僕。

 水差しに水を入れ、コンソメブイヨンを用意して戻ってくると・・・

「ちょうどいい。そのままいれろ。ついでにそのきのこもいれちゃえ〜」

 君には僕が見えているのかね…?
 素直に言われたとおりに水とコンソメを入れて、キノコも加える。

「これでしばしまて〜できたらよんでやるぞ〜」

 今までの調合とは一味も二味も違いすぎる…
 でも、しゃべるナベっていいかも。ちょっとほしくなった。
 けど、疲れる気もするよ…そんなことを考えながら、リディさんのつれてきたハトにマメを与えていると…

「おい、おい!」

 え?もうできたの?

「しまったのだ〜わすれてたのだ〜あじつけろ、あじ!しお〜こしょう〜」

 はい、そうですか。
 僕が調味料を入れると「かんぺきだ〜まつのだ〜」などといって言っている。
 忘れてたくせに、と思えば、自然と笑いがこみ上げてくる。
 光につつまれたナベを見守りつつ、僕はくすくすと笑ってしまった。

 数分後。
「できたぞ〜うまいぞ〜……たぶん。」

 たぶんってなに、たぶんって?!
 そう思いながら、光の消えたナベを覗き込めば、そこには立派なロールキャベツ。
 僕の好物であり、ナベにこき使われて作ったせいか、数倍美味しそうにみえる。
 リアンさんの口にあうといいなぁ…

 蓋付のココット皿にロールキャベツを移し、しゃべるナベにお礼を言いながら洗っていると…
「しごとはおわりか〜?もうおわりか〜?」

 やる気を見せるナベ。
 その後、一緒にゼリーを調理し、友好はさらに深まった…と思う。

 しゃべるナベには驚いたけど、優秀だし、とっても楽しかったな〜

 レニィちゃん、本当にありがと〜!

 


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